舌の重要な働き ~その2~

新学期が始まり、新しい制服に身を包んだ新入生らがとても初々しい姿で、見ているだけでほのぼのしてしまいますね^^

さて、随分前に舌の機能について発信しております(舌の重要な働き ~その1~ https://www.taki-dc.com/blog/799)が、今回は舌の機能口腔に及ぼす影響について述べたいと思います。

みなさまのなかに、口蓋(うわあご)をじっくり見たことがある人は少ないと思います。火傷をしたり何かデキモノができて気になって鏡でのぞくことはあるかも知れませんが、そもそも正面からは見えにくいですし、通常観察するところではないと思います。今回はその口蓋に視点を当ててみたいと思います。

そもそも口蓋の形は十人十色、千差万別です。といってもこれは現代人に限った話であって、化石として残った頭蓋骨などの研究から、古代の人々の口蓋の形はほぼ同一であったと考えられています。さらに、古代の人々の化石からガタガタした歯並びのヒトはほとんど見つかっていません。(化石としてまだ見つかっていないだけかも知れませんが)

最近の研究によりますと、口蓋の形と歯並びの関係『舌』の影響がとても大きいことがわかってきました。食生活の変化、ライフスタイルの変化など、長い年月における様々な変化が起こり、人類の進化として口蓋や顎が次第に小さくなっていることも考えられます。しかし古代人といっても、実はほんの100年ほど前の近代文化がまだ浸透していない原住民族の人々は、とても理想的な歯並びをしており、口蓋の形もとても良好なアーチ状をしていました。

アメリカの歯科医師、ウエストン・A・プライス博士の著書「食生活と身体の退化」に多くの貴重な写真が残っています。ご興味のある方は「プライス 食生活 歯」などと検索するとすぐに出てくると思います。プライス博士は、大自然から得たその土地のものを食べていた原住民族に、近代文明の流入による近代食が入ってくることで、ひどい虫歯や歯周病が多発し、さらにその世代から生まれた次世代の子供らは、顎や鼻孔が狭くなることを明かしています。そして「自然の恩恵をうけていた土着の食事に比べて、近代食はカロリーが高いばかりで栄養、とくにビタミンやミネラルに劣り、その影響が次世代の子供に退行的な影響を与える」と説いています。

もちろん栄養素はとても大事であると思います。ですが栄養素の欠乏が、顎が狭くなることに直結するというよりは、やはり柔らかい食物と糖質の過剰摂取が、虫歯や歯周病の原因ではないかと個人的に感じています。そして、食べ物が変わると、やはり咀嚼回数嚥下(飲み込み)の回数などに変化がでます。斎藤滋先生の食物と咀嚼回数の関係の研究によりますと、戦前の食事で、1食で平均1420回の咀嚼回数であったものが、現代では1食およそ620回にまで減っています。それにともない嚥下の回数も減少してしまうと考えられます。

時代によって変わる咀嚼回数と時間を表す図。時間の流れが現代にいくに従い咀嚼回数と時間は減少している

図:斎藤 滋 先生の著書「よく噛んで食べる 忘れられた究極の健康法」より引用改変

咀嚼と嚥下のいずれにも大きくかかわるのが『舌』です。舌の動き舌圧(押し付ける力)が、現代の食生活では正常に機能できるまで発達しにくくなっています。実際に平成30年(2018年)から「口腔機能発達不全症」という病名が歯科医療の現場に収載されました。これによって、保険診療の範囲内で口腔機能の正常な発育のための指導ができるようになりました。どんな内容の指導を行うかは、歯科医院ごとに大きく異なりますが、当院での指導に関しては、近々公開する「赤ちゃん歯科・口腔機能育成」のページにてお示ししたいと思います。最後までお読みくださりありがとうございました。舌の重要な働きシリーズもまだ続きますのでお楽しみに^^