知覚過敏について

今シーズンは何度か強い寒波が来ましたが、その後は比較的暖かい日が続いており、早くも春を感じる陽気でなんだか気が抜けてしまいますね。。。まだ1月ですから寒い日が続くと思いますので、皆さまも気温差にはお気を付けください!

さて、寒い日の朝のうがい「キーーンッ」と歯がしみることがありませんか!? たぶん多くの人が経験ありますよね。いわゆる「知覚過敏」の症状ですが、虫歯でもないのに歯がしみるのは、多くの場合歯茎の境あたりにおいて、歯の根っこ(象牙質)が露出していることによって起こります。そんなのすでに知っているよ!という方も多いと思いますが、比較的わかりやすい顕微鏡の画像がありますのでご紹介します。

※ このページの画像は、医歯薬出版「走査電子顕微鏡で旅する 口腔のミクロな世界」神山卓久著 より引用抜粋しております。

さきに結論を述べてしまうと、象牙質は歯の表面を覆うエナメル質と異なり、感覚を備えています。つまり、健康な象牙質を触るとその情報が歯の内側にある歯髄に伝わり、痛みとして知覚されるのです。ちなみに歯髄の感覚は、暖かい、冷たいなど細かく知覚されず、すべて「痛み」として感じます。パッと見ると石のように固い根っこの表面ですが、図1は象牙質を縦断した電子顕微鏡写真になります。ご覧いただくと、規則正しく波紋のようなスジが見えるのが分かります。(右上から斜めにヒビが入っていますが、電子顕微鏡写真撮影の操作過程で生じたもの)写真の左側が歯の表面で、右下が歯髄側になります。

 図1.象牙質縦断の弱拡大像

このスジのようなものは、象牙質の中を通る細長いトンネル象牙細管」と呼ばれる構造です。このトンネルの中には、歯髄側から神経線維が伸びていることが多く、これが知覚過敏の原因と考えられています。知覚過敏が起こるメカニズムのうち、動水力学説といわれる説で、いまのところ最も有力な説です。図2は、象牙質を横断した電子顕微鏡写真になります。あちこちに穴ぼこが開いていますが、これが歯の表面側のトンネル入り口です。

 図2.象牙質表面の強拡大像

そして、図3はこのトンネルを縦断するように強拡大したもので、トンネルの中に線維のようなものが入っているのが見えます。

 図3.象牙細管縦断の強拡大像

この線維状のものは象牙芽細胞と呼ばれる細胞の一部であり、歯髄側からの神経線維一緒に入っています。つまり、象牙質表面のトンネルの奥の方には神経線維が入っている(感覚がある)ので、象牙質の表面を歯ブラシで擦ったり、冷たい水が刺激となることで、「キーーンッ!」と特有の痛みを感じるのです。ちなみに表面のトンネル入り口を塞ぐことで感覚を鈍らせるのが、シュミテクトに代表される知覚過敏用の歯磨き剤です。

余談ですが、到底目には見えない小さなトンネルですが、細菌たちにとってはすばらしい住処となってしまいます。図4は、象牙細管に潜む細菌をとらえた写真です。

 図4.象牙細管のなかに潜む細菌

こうなってしまったら、次第に細菌がトンネルの奥の方に増殖侵攻してしまう、というのも想像できると思います。歯茎の境あたりから虫歯になりやすいのはこのためです。

さて今回はここまでです。もしもっと詳しく写真を閲覧したいという方がおられましたら、是非ご来院の際にお声掛けください^^