訪問診療先で口腔機能について考える

昨日は「岡山さくらカーニバル」の最終日で、天気にも恵まれ、後楽園周辺の人だかりはもちろんのこと、桜の名所がどこも花見客でにぎわっていたようですね。近年まれにみる最高のお花見日和だったと思います^^

さて、ここ最近シリーズでお伝えしている、口の機能を正しく育てる「口育」の対岸に位置するのが、「口腔機能低下症」と呼ばれる、読んで字のごとく口腔機能が低下してしまっている状態です。対岸とは表現しましたが、「口育」の延長線上にあるとも考えられます。つまり、幼少期に獲得して成熟した口腔機能が、加齢(老化)とともにだんだん衰えていくという、一連の連続したものであり、口育とも密接に関係していると考えられます。

先日訪問歯科診療にうかがっている施設の入所者さんを診察しているときのことです。意思の疎通はほとんどとれない入所者さんなのですが、「○○さ~ん」と声かけをして、肩やお顔をマッサージしてから口腔内を見ようと指で口元に触れると、私の指をちゅーちゅーと吸い始めました。いわゆる吸啜反射(赤ちゃんに備わっている原始的な反射行動)に近い動きをしていました。(口育を勉強中だったので思わず舌の動きを指先で感じて妙に納得してしまいました。)獲得したはずの口腔機能を忘れてしまったのか、乳児に逆戻りということになるのか、、、いずれにしても口腔機能低下症のひとつの型なのだと思いますが、訪問診療先ではままあることだと思います。その方はすでに経管栄養といって口からは食べ物を摂取することが全くないまま何年間もお過ごしになっていますので、口腔機能が低下するのはむべなるかな。。。

別のケースでいうと、同じく訪問先の施設ですが、総義歯を装着しているお婆ちゃんで、硬いものが食べれない、義歯が歯茎に擦れて傷になって痛いなど、度々診察しているお婆ちゃんがおりました。そのかたの口蓋がとても狭く、ミニサイズのような小さな総義歯の調整をしていたのですが、もしかして幼少期からずっと狭い口蓋だったのではないか?舌の動きが悪くて口呼吸だったのではないか?などと思考を巡らせていると、そういえば頻繁に「口が渇くわぁ」と訴えており、よく風邪をひくお婆ちゃんで、度々体調を崩していたなぁ、、と口腔機能と体調が繋がっているように思えました。

単なる加齢現象で免疫力が低下しているだけで、こじつけかもしれません。お婆ちゃんに過去の話を聞こうにも、認知症の影響で上手に話ができませんし検証はできませんが、以前講演会で小児歯科の大家である増田純一先生は「口蓋の形は舌の機能を表した鏡であり、小学校就学してからは自然に変化しない」というお話しをしてたのを思い出しました。一字一句の詳細までは自信がありませんが、舌の機能と口蓋の形というつながりを初めて意識するようになった講演会でしたので、インパクトが大きかったのを覚えています。

どちらのケースも、口腔機能の低下が認められる状態です。口腔機能低下症を診断する際には、「口腔乾燥の程度」、「舌圧(舌の力)」、「舌の汚れ」、「噛む力」、「咀嚼・嚥下の機能」など評価するのですが、総義歯を装着しており口腔乾燥が認められ、食事が上手に進まないなどの症状があれば該当するものと思われます。そういった高齢者の方にMFT「Myo-functional Therapy(口腔筋機能療法)」を行うのはナンセンスかもしれませんが、兆候が認められる壮年期からでも口腔機能低下症についても知ってほしいですし、まだ小さなお子さんがいらっしゃるお母さんにも知ってもらいたいと強く思います。

今回は高齢者と接するところから口腔機能について思いを巡らせてみました。あらためて口は健康の入り口だなぁと思います。ではまた次回です^^