口育 その5 ~口腔機能発達不全症という病状~

暑さ寒さも彼岸までとはよく言いますが、確かに、お彼岸を過ぎてから随分と涼しくなりましたね^^

今日のブログは1カ月ぶりの更新となってしまいました。夜な夜な院内勉強会に使用するプレゼンを作っていたもので、こっちまで手が回りませんでした orz

さて、今回も「口育」に関するテーマですが、タイトルにある「口腔機能発達不全症」という名前をご存知でしょうか?? 初めてこのブログにいらした方は、「口腔機能」「発達不全」などキーワードを検索して直接いらっしゃったかもしれませんので、当院での「口育」の取り組みついて簡単にご紹介いたします。当院では、乳幼児期からの口腔機能の正常な発達を促すよう指導する「口育士」の資格を持った歯科医師がおります。「口腔機能」とは、「食べる機能」・「話す機能」・「呼吸する機能」のことで、これらの機能が正常に獲得できていない状態のことを「口腔機能発達不全症」といいます。口育士は口腔機能が正常に発達できるように、発達時期のステージに合わせて本人と養育者に指導をしていきます。

乳幼児の口腔機能は、放っておけば自然に発達するものではなく、哺乳・離乳の時期から始まり、段階的に正しい経験を積んで、徐々に発達していくものです。この「段階的に正しい経験を積む」ことを知らずに、インターネットや特定のコミュニティーに依存して乳幼児の保育に係る情報を得るのは、その子の正しい成長発育を阻害する結果になってしまうケースがあります。

我々口育士は、口腔機能の成長発達を阻害するものとして、大きく3つの要因に分けて考えていきます。

ひとつめは「乳児嚥下の残存」です。

少し難しい用語ですが、「嚥下」とは飲み込むことで、乳児が飲み込むものというのは母乳やミルクのことですので、乳児嚥下の残存とは、「月齢は成長しているのに、赤ちゃん型の飲み込みがそのまま残っている状態」ということになります。本来は月齢が進むにつれて、徐々に乳児嚥下から成熟型嚥下(成人嚥下)に移行していくのですが、いくつかの原因がこの成長を阻害していると考えています。

2つめの要因は「口呼吸」です。

読んで字のごとく、口で呼吸をしていることです。本来口は呼吸をするところではありません。哺乳類で口呼吸ができるのはヒトだけだそうです。それは声によるコミュニケーションを獲得したため、声帯、喉頭の位置が進化したためだと言われています。口呼吸は鼻呼吸と比べると、雑菌やほこりなどを含む乾燥した冷たい空気が直接肺に入るため、肺胞で行われるガス交換の効率が低下しやすく、酸素が不足しやすい呼吸であることが分かっています。また雑菌やウィルスを含むため風邪をひきやすい、口が乾燥するなど、弊害が多く報告されています。正常な鼻呼吸が獲得されずに口呼吸をする習慣がつくと、舌のポジションが低位な状態(低位舌)になりやすく、嚥下の機能発達に悪影響をおよぼします。鼻に異常があれば耳鼻科で対応が必要なこともあります。

3つめは先ほども出た「低位舌」です。

舌のポジションは最も重要で、普段から舌の先がスポットと呼ばれる場所に触れており、嚥下する際には舌の中央から後方部がしっかり口蓋(うわあご)に密着するように挙上されるのがとても大事です。もともと舌の動きが悪いケースでは、舌小帯と呼ばれる舌の裏側のスジが正常より短いことがあります。ケースによっては小帯を切除しなければならないこともあります。また、低位舌口呼吸と関連しており、歯並びが狭く窮屈な場合でも低位舌になりやすいと言われています。

これらの要因はお互い絡みあい、結果として「口腔機能発達不全症」の状態になってしまいます。当院では「口腔機能の正しい発達を促す指導」を受けることができます。ケースによっては、舌の動きを改善するような装置を用いて、本格的なトレーニングをする必要があります。MFT(Myo-Functional Therapy:口腔筋機能療法)と呼ばれており、乳幼児期の口腔機能の正常な発達は、結果的にきれいな歯並びを獲得することにもつながります。ご興味のある方は当院スタッフまでお問い合わせください^^

少々内容が難しかったかもしれませんが、最後までお読みくださりありがとうございました^^